マインドフルネスは自我を強化するものではない

マインドフルネスは表面的な理解が広がっている一方で、その本質があまり伝わっていないのではないかと感じています。しかし、まずは上辺だけでもそれを学び、実践することは良いことだと思います。ただ、本音のところでは、上辺だけではなく、本来の仏教を基にしたマインドフルネス、能力を得たりビジネスに活かす方向に行くことが多いですが、そうではなくて、本当に自我を超えて、あるがままの本来の自分に至ることが理想だと考えています。


ある禅の僧侶の意見によれば、欧米で伝わっているマインドフルネスは、仕事に役立てたり、何かを得たり、改善したりするために行われていることが多いとのことです。それは自我を強化することになり、どこかで限界が生じ、頭打ちになるだろうと言われています。やはり本来は自我を越えていく、本来の意味でのマインドフルネス瞑想が望ましいとされています。この僧侶はアメリカで禅を指導しており、欧米人に瞑想を教えた経験があるため、欧米人の瞑想の捉え方やその目的についても熟知されています。そのため、欧米でのマインドフルネスに関する見解について説得力があります。


仏教は自我やマインドを強めるのではなく、逆に弱め、そこから離れ、超越していくことを目指しています。別の言い方をすれば、それをも含むという表現もできるかもしれません。しかし、西洋でのヨガやマインドフルネス、今の日本でもほとんど同様ですが、自我を弱めることや超えることではなく、逆に自我を強めることになっていると感じます。それを強く批判している人も多く、理解できます。


ただし、私は「これでなければダメだ」とは言えず、取っ掛かりとしては良いと思います。それとは別に、自我を強める形のマインドフルネスやヨガだけでは問題があると感じています。西洋人は強い自我を持っており、それを強めようとする傾向があります。そのため、逆に「no mind」という、自我をなくすことが強調される教えが西洋に伝わったノンデュアリティや非二元論では重要視されています。


日本の場合、日本人は強烈な自我よりも自我が弱い状態であり、良い意味で自我が弱いというより、そもそもきちんとした形の自我が確立できていないとも言えます。そのため、ある意味で自我をきちんと確立させることも必要な場合があります。


西洋の影響が強く、日本人は良くも悪くも影響を受けやすいところがあります。もともと自我が強烈ではなかった日本人が、自我を強めることが多くなり、その結果、自我の強化としてのマインドフルネスを行っている人も多いと思います。やはり原点に立ち返り、その上で自我の強化につながるマインドフルネスに取り組むのは、最初は仕方ないことだと思います。瞑想を行うためには、まず自我を強めていくことが必要な場合もあるかもしれません。


このように、自我を強めた上で自我を超えていく流れに入る方がいることを願っています。何度も言っていることですが、上澄みだけのポップな形のヨガやマインドフルネスだけが伝わるのは望ましくなく、全体像がきちんと伝わることが大切だと思います。


その上で、まずは取っ掛かりとして簡単に取り組めるものであったり、自我を強める形であっても、そこからマインドフルネス瞑想に取り組むことが重要です。そもそも本来のマインドフルネスは、自我の強化ではなく、自我を超えていくことです。


以前聞いた話の中に、笑い話のようなことがあります。多分西洋人の話ですが、マインドフルネス瞑想がビジネスにおいて効果的で、余分なストレスを減らし、仕事の効率が上がり、頭がクリアになって的確な判断や選択ができるようになると聞いて、それではやってみようとマインドフルネス瞑想に取り組みました。


ところが、その人はマインドフルネス瞑想を続けるほど、記憶力が以前よりも弱まってしまったと言います。つまり、自我を超えていく方向に進んでしまい、仕事の効率が上がるどころか、逆に本来のマインドフルネスの現れが出てきてしまったということです。この話を聞いて、私はその人が本来のマインドフルネスの効果を体験したのだと感じました。


しかし、これはおそらく、きちんと行わず混沌とした状態に没入してしまった結果、ぼーっとして考えられなくなったのかもしれません。本来のマインドフルネスは、自我を強めて自我の働きで様々なことをなすのではなく、その逆の方向性を持っています。


今後、マインドフルネス瞑想を行い、ビジネスに生かしたり能力を上げたり、心身のストレスを軽減することではない、本来のマインドフルネスの在り方に気づく方も増えてくるでしょう。ただし、それはマインドにとって何の価値もないもので、「こんなものは必要ない」と感じる方もいるでしょうし、逆に「マインドフルネスはこういうものなんだ、素晴らしい」と感じて、本来のマインドフルネスの在り方に意識が向かう方もいるでしょう。


私はマインドフルネス瞑想という形ではあまり打ち出していませんが、本来の意味でのマインドフルネス、世間一般に広まっているマインドフルネスとは異なる、本来の仏教を根本としたものをお伝えしていければと思います。

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